キミとの距離は1センチ
「はあ……」



埃っぽい物品庫にひとりしゃがみ込みながら、ため息を吐く。

しんどい……。オフィスが同じでおまけに席も斜めな人を避けるのって、すごく重労働だ。

なんで伊瀬は、わたしのことあんなナチュラルに避けられたの? それも才能なの?


ひとしきりうんうん唸ってから、気合いを入れ直して立ち上がる。

そうして物品庫のドアを開けた瞬間、すぐ横にある壁に腕を組んで寄りかかっている人物に気付いて、思わずヒッと声が漏れた。

とっさにまたドアを閉めようとしたのに、開いた隙間へとすかさず片足を突っ込まれて、あっさりそれも阻まれる。



「………」

「佐久真、ちょっと話、あるんだけど」



ひとことひとこと、まるで小さい子に言い聞かせるようなその話し方に、背筋を冷や汗が流れる。

わたしは逃げることも、拒否することもできないまま。いつもの真顔でやたらと威圧感を発している同期を目の前に、こくりと小さくうなずいたのだった。
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