キミとの距離は1センチ
……なに、それ。

あの出来事を気にしてるのは、わたしだけなの? ただの同期なら、あんなの、絶対にしちゃいけないことなのに。

わたしが、おかしいの? “普通のオトナ”は、あんなことじゃ動じないのがあたりまえなの?

……伊瀬は本当に、何とも、思っていないの?


ズキンと、胸が痛む。

文句を言おうと思って、そこで初めて、わたしは顔を上げた。



「……ッ、」



だけど顔を上げて、伊瀬と目が合った瞬間。

必死で思い出さないようにしていた、“あのときの彼”が、頭の中によみがえってしまって。

わたしはすぐに、言葉に詰まってしまう。



「佐久真?」


《……泣くな、佐久真》



……いやだ。



《──ああ、佐久真は、ここがいいんだ?》



やだ、やめて、出て来ないで。



《……や、もう……伊瀬ぇ……っ》

《っは、佐久真、かわい……》



だめ、だめ、だめだってば……!!
< 150 / 243 >

この作品をシェア

pagetop