キミとの距離は1センチ
「佐久真、さっきのは……」

「……別に、いいよ。弁解しなくても」



冷たく言いながら、掴まれた腕を振り解こうとするけど、びくともしない。

代わりにわたしは伊瀬に自分の顔を見せないようにすることで、彼に反抗した。



「佐久真、聞けって」

「……ちゃんとわたし、わかってたよ。伊瀬がわたしのこと、“そういう対象”で見てないことくらい。だって、嫌だもんね? 自分より、背が高い女なんて」

「おい、」



そう、わかってた。

だからこそわたしは、今まで伊瀬と、ああいう関係を築いて来れたの。

男だとか女だとか、そんなものは関係ない。この心地良いぬるま湯みたいな時間が、ずっと続くものなんだと、疑うこともなくて。


──なのに。



《……泣くな、佐久真》



……じゃあ、どうして?

どうして、伊瀬は……あのときわたしを、抱いたの?
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