キミとの距離は1センチ
ここ最近の、わたしたちの間にある微妙な雰囲気を感じとっていたオフィス内の同僚たちが、固唾をのんで成り行きを見守っていたのにも気付いていたけれど。

その視線たちもどうでもよくなってしまうくらい、今のわたしは、呆然としてしまっていた。


……な、なに、あれ。

なんであんな、ふ、普通の態度、だし。

それに、『今まで悪かった』、って……?


今日出勤するまで、どんな顔をして会えばいいのかわからなくて。

告白に対する答えも、結局出すことはできていなくて。

そんな感じで、ものすごく重い足取りでオフィスへと足を踏み入れたというのに……さっきも普通に会話したように、今朝からのわたしに対する伊瀬の態度は、まさにいつも通りで。

……そう。ここしばらくの微妙な雰囲気すら、なかったことにしてるみたいな……“今まで通り”の、伊瀬なのだ。



「………」



ちらりと、斜め前のデスクにいる、伊瀬を盗み見る。

彼は何やら資料やわたしが貸したホチキスなどを抱えると、席を立ってオフィスから出て行ってしまった。

ひそひそ、まわりにいる同僚たちが、「なんだ、今日は普通じゃん」なんて、話してるのが聞こえる。
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