キミとの距離は1センチ
それにしても、今日は蒸し暑いし疲れた。お祭りなんかでよく見るような、氷水を張った大きな容器を覗くと、わたしの好きなペットボトルのオレンジジュースが目に入った。

取り出したそれをタオルで拭いてから、そのへんにあった紙コップになみなみと注ぐ。

物陰にしゃがみ込みながらこっそりオレンジジュースでのどを潤していると、何やら慌てた様子の浅尾さんがやって来た。



「おお、佐久真今ヒマか?! ヒマだよな?!」

「そんなヒマヒマ言わないでくださいよ……ちゃんと働いてますって! これはちょっと、一息入れてただけです!」

「はいはい、働いてんの見てた見てた。で、ちょっと頼まれて欲しいんだけど」



うわー、あんまりいい予感はしないなあ。

そうは思いながらも、わたしは立ち上がる。



「はい、なんですか?」

「松田さんがさ、コーヒー飲みたいっていうんだよ。ちょっと中行って自販機で買って来てくれねぇ?」



松田さんといえば、提携してる広告会社の部長さんだ。

わたしはつい先ほど自分がジュースを取り出した、青い容器を指さした。
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