キミとの距離は1センチ
「コーヒーなら、この中にもありますよ。ペットボトルの」

「ミル挽きの、ホットコーヒーが飲みたいんだと。12階にあるやつ」

「……了解でーす」

「悪いな。キリマンジャロのブラックでよろしく」



浅尾さんは自分のお財布から千円を取り出すと、わたしに押しつけるようにしてそそくさ踵を返した。

彼が向かう先には数人の中年男性がいて、浅尾さんが戻るなりバシバシ肩を叩いている。


うーん、浅尾さん、気に入られてるみたいだなあ。

あれじゃあなかなか抜け出せられないや。


ひとつ息を吐いてから、わたしも屋上の出入口へと歩き出す。

エレベーターホールにたどり着き、下矢印のボタンを押した。


……あれ、これって後で経費で落ちるのかな。あの自販機、レシートなんて出ないよね?

……まあいいや、浅尾さんのだし。


そんな若干失礼なことを考えながら、ドアを大きく開いてわたしを待ち受けるエレベーターに乗り込んだ。
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