キミとの距離は1センチ
赤いランプが【終了】のところに来たタイミングで、自販機の自動扉が開く。

ちゃんと蓋もしてある、熱々のコーヒーを中から取り出して顔を上げたところで、廊下の向こう側から話し声が聞こえることに気がついた。


……他にも、誰か降りて来てるのかな?

軽い気持ちで、ひょいと、曲がり角から顔を覗かせる。



「すみません伊瀬さん、重い方持ってもらっちゃって……」

「はは、大丈夫だよ」


「──、」



視線の先にいたのは、ちょうどマーケティング部のオフィスから出てきた、伊瀬とさなえちゃんだった。

ふたりともビニール袋を片手に提げていて、伊瀬が持っている方はいかにも重そうなほど大きい。

そのツーショットを見た瞬間、どくんと、心臓が嫌な音をたてた。

どうしてか、見ていたくないと思うのに──目が、逸らせない。


ふたりは、わたしの存在にはまだ気付いていないようだ。

楽しげに会話をしながら、こちらに向かって歩いて来る。
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