キミとの距離は1センチ
「しっかしこのお菓子、すごい量だな。お客さん食べ切れないと思うんだけど」

「ふふふ。西川さんが、『余ったらマーケティング部でお菓子パーティーしよう!』って、はりきってましたよ」

「なんなんだろうねあの人、馬鹿なのかな」



神妙な顔でそう話す伊瀬に対し、さなえちゃんが片手で口元を押さえながら、「あははっ」とかわいらしく声をあげて笑う。

すると不意に彼女が、その場に足を止めた。

それに気付いた伊瀬も、さなえちゃんより数歩進んだところで、立ち止まる。



「木下さん?」



どうかした? というような意味が込められた、伊瀬の声に。

さなえちゃんが、うつむかせていた顔を上げた。

頬を赤く染め、伊瀬をまっすぐに見つめるその顔は、今まで見てきたどんな彼女の表情よりも、可憐で魅力的で。



「……すきです」

「え?」



パッと、思わず片手で口元を覆った。

伊瀬はわたしに背を向けているから、その表情は見えない。



「伊瀬さんのことが、すきです。……よかったら私を……彼女に、してくれませんか?」



そこでようやく、わたしは角から顔を引っ込めた。

口元は押さえたまま壁に背中をつけて、呆然と自分のつま先を見つめる。
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