キミとの距離は1センチ
──さなえちゃんは、伊瀬のことが、すきだったの?

今までずっと、気付かなかった。……考えたことも、なかった。



「……木下さん……」



彼女を呼ぶ伊瀬の声に、ハッとする。

どくどくと、やっぱりわたしの鼓動は、いつもよりも速くて。


……どうしてわたしが、こんなに緊張してるの?



「すき、なんです……っ」



廊下の向こう側から小さく届くさなえちゃんの告白は、なんだか涙声で。

そこでふっと、伊瀬が、やわらかく微笑んだような気配がした。



「……ありがとう」



その言葉を耳にした瞬間、わたしはそこから、逃げるように去った。

足音をたてないように、だけどできるだけ速く、廊下を進む。

ようやくエレベーターホールまで来ると、ボタンを押してすぐに開いたエレベーターに飛び乗った。
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