キミとの距離は1センチ
珠綺、と、一際強く、名前を呼ばれた。

そのタイミングで、ぐすっと、わたしは鼻をすする音を漏らしてしまう。

スピーカーからは、都の呆れたような、苦笑いのような声が届いた。



『……ばかだなあ、珠綺は。なんでそんなになるまで、鈍感なの』

「み、みやこ、わたし……」



いつの間にか溢れてしまっていた涙を、スマホを持っていない右手で拭う。


ズキズキと、痛む胸。

本当は、さっきの告白シーンを見なくても……伊瀬がわたしに、何もなかったかのように振る舞ったあのときから。……ずっと、痛かった。



「わたし、伊瀬がわたしを、今までみたいなただの同期として扱うたび……く、苦しかったの」

『うん』

「勝手、だよね。今まで散々、わたしだってそうしてきたのに……っ」



ぽたぽた、頬を伝った涙が、わたしの膝を濡らしていく。

ああ、こんなの、誰にも見せられない。みんなはわたしのこと、元気でいつも明るくて悩みなんてないガサツ女だって、思ってるもん。
< 207 / 243 >

この作品をシェア

pagetop