キミとの距離は1センチ
「うん。俺も、珠綺ちゃんのこと好きだよ。……だけどそれは、たぶんお互い、家族愛に近いものだったんだと思う」

「……かぞく……?」



思いも寄らない言葉が彼の口から飛び出して、目をまたたかせた。

そう、家族。つぶやいて、宇野さんがうなずく。



「珠綺ちゃんは、がんばり屋さんだよね。同じ部署で働いてたときも、いつも、男の社員と同じくらい遅くまで残ってて」

「………」

「きみはいつも気丈に振舞ってるから、なかなかまわりは気付きにくいけど……たぶん結構、あの頃の珠綺ちゃんは疲れてしまってたと思うよ」



あの頃。きっとそれは、宇野さんがわたしに告白してきた頃。

確かにあの時期は、毎日ヘトヘトになりながら家に帰っていたけれど……。



「そ、それが、どうして……」

「うん。俺はね、そんなきみを近くで見てたから、心配だった。きみはかわいい後輩で、恋愛対象にはならなくても……大切な、存在だったから」



そう言ってやさしく笑いかけてくれるから、思わず涙が出そうだ。

そんなわたしの頭にポンと手を乗せて、宇野さんは続ける。
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