キミとの距離は1センチ
「ねーえー? 珠綺って、まだ宇野さんと付き合ってるの?」



お酒もだいぶ進んだ頃、たこわさの小鉢をつつきながら、間延びした声で都が言う。

思わず目をまたたかせて、持っていたグラスをテーブルの上に置いた。



「うん、付き合ってるけど」

「ふううううん?」

「……なにそれ、引っかかるなあ」



思わず苦笑して、鳥軟骨の唐揚げに箸を伸ばす。

都はいつ見ても綺麗にルージュが乗ったくちびるをとがらせて、じとりとこちらに視線を寄越した。



「だって、珠綺さあ~。全然、恋してる感じしないんだもん」

「……失礼だな」



彼女のあんまりな言い草に、今度はわたしが、不満げにくちびるをとがらせる番だ。

恋してる感じ、しないって……なにそれ、そんなにわたし、枯れてんの?



「あくまで、あたしの主観だけどね。普通あんなスーパー彼氏いたら、もっとわかりやすくお花畑なオーラ出てるんじゃないかなーって」

「お花畑……」

「ふっつーじゃん、珠綺。宇野さんと一緒にいても、今みたいに宇野さんの話してても」

「………」
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