キミとの距離は1センチ
先ほどから話題にのぼっている宇野 修平(うの しゅうへい)さんは、わたしが以前いた量販営業部の先輩だ。

すらりと高い身長に、アイドルかってくらい整ったお顔。気さくで話し上手の聞き上手、ふんわりやわらかい笑顔にはご機嫌ナナメな上司ですらもあっさり懐柔されるうえ、目元の涙ぼくろがまたセクシー(都談)。


──半年前、そんな人に「付き合って欲しい」と告白されたときは、本当に驚いた。



「たしかにさ、宇野さんはイケメンだし仕事できるし言うことないと思うんだけど。でもなぁんか、違うんだよねー」

「……違うって?」

「珠綺と合ってないってこと」



ズバリ言われて、思わず顔が引きつる。



「そ、そりゃあわたしだって……超人な宇野さんに全然つり合ってないって、自分でもわかってるけども!」

「あ、ごめんごめん、言い方悪かった。つり合わないとかじゃなくて、……うーん、なんていうのかな……雰囲気? オーラ? が、なんか違う」

「………」



……わかんない。わたしなんかより全然恋愛経験が多い都サンの言うことは、経験値が低すぎるわたしにはよくわかんない。

なんだか置いてけぼりになったような気分でグラスを両手で持ち、ちびちびハイボールに口をつける。
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