キミとの距離は1センチ
そういえば宇野さんと付き合ってから、心配していたような呼び出しとか、なかったな。

わたし結構、総務あたりのお姉さま方にシバかれるの覚悟してたんだけど……拍子抜けするくらい、まわりの人は祝福してくれたっけ。

まあ宇野さんって、意外と言ったらなんだけど、無駄に女の子にやさしくするようなことしないもんな。告白されてもバッサバッサ斬って、彼女も、ずっといないって聞いてたし。

そんな宇野さんが付き合った女ってことで、しばらくの間、社内のあちこちから好奇の視線は向けられてたけど。


ていうか、量販営業部とかの身近な人は、わたしたちのこと笑いのネタにしてたな。

「まさか佐久真と付き合うなんて、王子のご乱心だー!」って、みんな言ってたっけ。……ちょっとこれ今思えばすっごくわたしにシツレーなんじゃないの。



「……珠綺って、ほんとに宇野さんのことすきなの?」

「へ?」



ぼんやり壁に貼ってあるポスターを見つめつつ、カラカラとグラスの氷を鳴らしながらつぶやいた都のせりふが、思考をトリップさせていたわたしを現実に引き戻した。

咀嚼していたもろきゅうをごくん、と飲み込んで、ひとこと。
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