キミとの距離は1センチ
そもそもこの件は、始まりからおかしいんだ。

盗み聞いた話から察するに、どうやら新庄さんは、同じオフィスとはいえ違う部署であるさなえちゃんに、会議資料の作成を押しつけたらしい。

で、そこで運悪く不備をしてしまって……こんなふうに、人の目に晒されながら糾弾される事態になったみたい。

まあ、ちょうど役職者たちが会議で全員出払ってて、かつ昼休み中で人がまばらなこのときに決行してるあたり、そこまでの度胸はないのだろうけど。


……というか、新庄さんの様子見てると……ほんとにさなえちゃんがミスしたのかどうか、それすらもあやしいな。

あの人は以前から、さなえちゃんのことを敵対視していたきらいがある。若くてかわいらしくていつも一生懸命なさなえちゃんは、男性社員のみならず、わたしみたいな女性社員からもかわいがられているから。

いわゆる、醜い女の嫉妬ってやつだ。



「………」



とはいえ、ここでわたしが出て行っても、たぶん事態を悪化させてしまう可能性の方が高いんだろう。

今この場は収まったとしても、きっと、今後さらに新庄さんの反感を買ってしまうと思う。

わたしは別に、多少嫌がらせされたって今さらビビったりしないけど……まだハタチそこそこのさなえちゃんには、いい意味で耐性がない。それが酷だ。
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