キミとの距離は1センチ
「なんか、無駄に疲れた。もう帰りたい」

「あんたはまた、そんな年寄りくさい……」

「ほっとけ。……俺は、おまえが真っ先に飛び出していくもんだと思ったけど」



椅子に腰をおろした伊瀬が、小さく首をかしげながらそんなことを言う。

わたしは左手で頬杖をついて、ひらひらともう片方の手を振った。



「だってわたしが出てっても、たぶん余計新庄さんの反感買うだけだもん。今後、嫌がらせがエスカレートしたら面倒じゃない」

「へぇ」

「いやまあ、伊瀬が来なかったら正直我慢できてなかったと思うけどさ……でももし、それでまた機嫌損ねて当り散らされたら、さなえちゃんがかわいそうでしょ? ……まっ、わたしが嫌がらせされる分には全然平気なんだけどね~」



何でもないようにそう言ってみせると、伊瀬はなぜか、きょとんと目を瞬かせて。

だけど次の瞬間、ふ、と口元を緩めた。



「……嘘つけ」

「はっ?! 何がよ、わたしだっていろいろ考えてるんだからね??!」

「ふっ。ああうん、わかったわかった」

「~~ッ」
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