キミとの距離は1センチ
そっか……伊瀬、すきな人がいるんだ。

まだ勝手な想像の段階だけど、わたしはすっかりその気になってしまう。


一体、どんな人なんだろう。伊瀬が、すきになる女性。

こないだ、さなえちゃんのこと訊ねたときは、否定されたからな。ってことは、さなえちゃんではないのかな……。

あ、でも、もしほんとにすきだったりしても、素直に言うとは限らないよね? 伊瀬のことだから、誰にも言わないで隠すかも。



「………」



そんなことを考えていたら、ちくん、と、小さく胸が痛んだ。

自分でもそれに驚いて、思わず右手を胸にあてる。


……あれ。わたし何に、傷ついてるんだろう。

伊瀬がわたしに、すきな人がいること、教えてくれなかったから? さみしい、のかな。

けどまあ、これはまだ、わたしの想像の域の話だ。実際に、伊瀬にすきな人がいるとは限らない。


でも、でも──もし本当に、伊瀬が誰かに恋をしているのだとしたら。

それなら、合コンだって行く気にならないよね。わたしは伊瀬には、ちゃんと自分のすきな人と、しあわせになってもらいたいよ。


……伊瀬は、大切な、同期だもん。
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