キミとの距離は1センチ
「い、伊瀬? ほんとにだいじょう──」

「……佐久真。ちょっと来て」



ようやく顔を上げた伊瀬は若干涙目で、それに驚いているうちにあっさり片手を掴まれた。

早足で歩く彼にぐいぐい手首を引かれ、わたしたちはオフィスを後にする。


伊瀬が立ち止まったのは、いつもの休憩スペースだ。彼が好きな、コーヒーの自販機があるところ。

そこまで来たとたん、掴まれていた手首はパッと解放されて。

自販機に背を預け、腕を組んだ伊瀬がわたしを半眼で見つめる。



「……で? なに、さっきの」

「う、ご、ごめん、タイミング悪くて……あの、痛かったよね?」

「痛かったよ。痛かったけど、それよりなんなんだよ、あの質問は」



そう言ってキロリとわたしを睨む伊瀬のあごは、この位置から見てもちょっと赤くなってる。あああ……。



「佐久真?」



黙ったままのわたしに焦れたように、彼がいつもより強めに名前を呼ぶ。

なんだか情けない気持ちになりながら、わたしはようやくぽつぽつと、話し始めた。
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