キミとの距離は1センチ
「……それで?」

「え?」



びくついて涙目になりそうな自分を堪えていたら、不意に言葉が投げつけられた。

やっぱり伊瀬は腕を組んで、わたしを鋭く見据えている。



「俺に、すきな人がいたとして……それが誰か、わかったわけ?」



言いながら、彼は口元を少しだけ緩めた。

嘲笑とも思えるそれに、こくりと唾を飲み込む。

……伊瀬の前で、こんなに緊張をしたのは、初めてかもしれない。



「……わかんないよ。だから直接、訊いたんだけど」



目を逸らさないように、まっすぐ伊瀬を見つめながら言った。

そこでようやく、ふっと、彼のまとう空気が軽くなる。



「……ま、そうだよな。佐久真は、そういうヤツだよな」



口元に、今度はほんとの笑みを浮かべて、伊瀬が自販機に預けていたからだを起こす。

……なんか、褒められてる気はしないな。そんな思いでジト目を向ければ、何かを察したらしい伊瀬が「褒め言葉だから」と笑った。
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