キミとの距離は1センチ
なんだか子ども扱いされているような気がして、思わずむっとくちびるをとがらせる。

そんなわたしの頭を、ポンとひとつ、伊瀬が叩いた。

ちょっとびっくりして、うつむかせていた顔を上げる。



「合コンの話を断ったのは、気が乗らなかっただけ。ただそれだけだ」

「………」

「……すきなヤツなんて、いないよ」



そう言って微笑んだ伊瀬のカオが、やっぱり少し、悲しそうに見えてしまうのは……わたしの気のせい、なのだろうか。

戻るか、と言って歩き出した彼の隣りに並んで、その横顔を盗み見る。


切れ長の瞳。通った鼻筋。薄いくちびる。さらさらの黒髪。

伊瀬の性格をそのまま表したみたいな凛としたその顔立ちが、わたしは好きだ。

そんなこと言ったら、この“若様”は思いっきり眉を寄せて、不機嫌になりそうだけど。



「……伊瀬、やっぱりここ、少し赤くなってる」



隣りを歩きつつも少しだけ首を傾けて、その顔を覗き込むようにしながら。

触れるまではしないまでも、伊瀬のあごにそっと手を添える。


やってしまってから、あ、振り払われるかな、って、頭の片隅で思ったけれど。

予想外に、伊瀬はそのまままっすぐ、わたしの目を見返してきた。
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