キミとの距離は1センチ
「とりあえずこっち、自分なりに息継ぎしながら泳いで来て」



まずは、わたしの実力チェックですか……。

むむっとくちびるをとがらせてから、しぶしぶ、壁を蹴ってスタートする。

半分以上は息継ぎなしで泳いで、残りの半分は、なんとかあっぷあっぷ呼吸して伊瀬のところにたどり着いた。



「肺活量、すげーじゃん。顔つけたまま半分いってたぞ」

「ふはは、元吹奏楽部の実力、見たか!」

「基本おまえ、運動神経ないもんな。いかにもできそうな見た目に反して」

「………」



褒めた後に落とすなよ、このやろう……。

うらみがましく睨むと、「冗談だって」と言って、伊瀬がふっと笑った。



「クロールのフォームは悪くないと思う。問題は息継ぎだけど、佐久真は顔上げすぎなんだよ。もっと、軽くでいいから」

「軽く……」

「そう。で、息は水の中で全部吐ききること。そうすると顔上げたとき、吸おうと思わなくても自然と新鮮な空気が口から入ってくるから」



す、すごい伊瀬、ちゃんと教えてくれてる……。

これはわたしも、ちゃんと真剣にがんばらないと……!


その後30分ほど、わたしたちの特訓は続いた。
< 88 / 243 >

この作品をシェア

pagetop