キミとの距離は1センチ
「ごめん、ありがと」

「……ちゃんと、結んでおけよ」

「いやー。自分できつく結ぶの、結構難しいんだよね」



言いながらぎゅうぎゅうに蝶々結びするけど、なぁんかしっくりこない。

ちらり、いまだに視線を外したままの、伊瀬に目を向ける。



「……伊瀬くん」

「なに?」

「わたしのリボン結んでくれな」

「アホなの?」

「……ごめんなさい」



……ですよねー。さすがにそれはイカンよね。

後ろから結ぼうとしたら、胸元見えちゃうかもしれないもんね。いくら同期でも、それはちょっと危険……。



「………」



そこまで考えて、今さらながら、恥ずかしくなってしまった。

そ、そうだよね。胸、見えちゃったりしたら……お、お互い、気まずいよね。

あああ、10秒前の自分、ほんとアホ。デリカシー、なさすぎでしょう……。


心なしか、伊瀬の顔も、少しだけ赤い気がする。

……同じこと、考えたのかな。ううう、ごめん伊瀬恥ずかしい……!





「……宇野さん、よかったんですか?」

「何が? 木下さん」

「……彼女の珠綺さんと伊瀬さんを一緒にして、です」

「んー、別に? ふふふ。おもしろいよね、あのふたり」

「………」



第4レーンでのそんな会話を、わたしたちは知らない。
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