《キャラバト》白衣の保険医と黒い翼

紋章に立ったままだった彼は、朱祢に近づき、頭をこんっと小突いた。


「ダメですよ、朱祢。私だからいいものの、人様にやっては失礼です」

「はぁい」


怒ってはいるものの、彼はにこにこと笑っていて、朱祢も幸せそうだった。


「な、なんでそなたが此所に…」

「あ、鸞じゃないですか。久しぶりです」


驚愕している鸞に、苑雛は苦笑しながら説明する。


「我が主、驪――否、“お父さん”に来てもらったのは、ラスクを追い払ってもらうためです」


「苑雛」


たーっと走りよってきた苑雛を抱き締めた。


「小さいですね、ちゃんと食べてますか?」

「食べてますよ!えへへ♪」


ぎゅぅと抱き締め、頬擦り頬擦り。

「さて、朱祢。何の用ですか?」

「あのね、あの異国の神々を追い払って欲しいんだ」

「わっかりました!私頑張ります!…と、その前に朱祢。出してもらいたいものがあります」

「え?」

「あの巨人を倒さなきゃいけませんからね」

えっへん、とうでまくりして。

「塩乾珠(シオフルタマ)を出してください」

「え?まあいいけど」

【塩乾珠】

置いたままだったネックレスにキスをして、掌の中で詠唱をし、それを出した。


真っ白い珠だ。


水晶に酷似したそれを、礼を言いながら驪は受けとり去った。


ラスクに近づく前に黒庵に挨拶――黒庵は驚愕してるだけだったが。

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