《キャラバト》白衣の保険医と黒い翼

「あなたは吸血獣ですか」


巨人を挟んで対峙する。

巨人が腕を振り上げながら彼に攻撃してきたが、避けた。


「なんですか、この巨人は――!でかいくせに神格は高くない。紛い物ですか」

「君はなんだい?人か、獣か、また神様かな?」

ラスクは巨人をうっとりと眺めながら、彼に問うた。


「私は、驪です。今はあの子たちの親ですよ」


ピョンっと巨人の腕に乗り、パタパタと駆ける。

頭に向かって。


「親?鳳凰ってやつかな?」


「いえ――私は、ただの邪神と崇められてるやつですよ」


少しだけ、切なそうに。

「そんな私があの子たちの親になれたんです。苦労させたぶん、力になってやりたいじゃぁないですか」


夢見る目付きでラスクを見て。



先ほど出した塩乾珠を巨人の口に放った。



塩乾珠とは、日本神話に出てくる神器だ。

天孫である爾々芸命(ニニギノミコト)の子供である山幸彦(ホオリ)は、兄である海幸彦(ホデリ)の釣り針をなくしてしまい、探しに旅に出るが途中で海神(ワダツミ)の異界についてしまう。

そこで海神の娘豊玉毘売命(トヨタマヒメ)と結婚し過ごすが、兄が忘れられず戻りたいと願ったところ、海神から託されたものがこれだ。

呪文を唱えれば海を壊滅させる力をもち、対義語は塩満珠である。


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