《キャラバト》白衣の保険医と黒い翼
【この針は、おぼ針、すす針、貧針、うる針】
詠唱した。
これは山幸彦が唱えた呪文であるが、これを唱えなければ塩乾珠の効力は発揮されないという伝承が残った。
ちなみに、憂鬱になる針、心が落ち着かなくなる針、貧しくなる針、愚かになる針という意味である。
いわゆる呪詛。
そして瞬く間に不可解な現象が起こった。
放った珠は体内に入り、真ん中で効力を発揮した。
つまり、塩――水分を全て奪ったのである。
サラサラの乾いた砂と化した土は、体を維持できず――全部滅んだ。
「へぇ」
「日本神話をなめないでいただきたいですね」
サラサラと崩れたせいで、ひゅるひゅると落ちた彼は、落下しながらそんなことを言うのだった。
「ちっ」
黒庵が走り、落下してる彼を両手で受け取った。
「おや、気を使わせてごめんなさいね」
「俺らの親父に死なれちゃ困るだろ」
「ハハハ、素直で可愛いです」
「かわっ…」
「いいこいいこですね」
「ばっ、バカにすんな!」
お姫様抱っこされながら、神の親子は笑いあった。