新撰組異聞―鼻血ラプソディ
言いながら翡翠は、山南の手を握りしめる。

ぶつぶつと数を数える翡翠の声を聞き、翡翠が歩数を数えているのだと悟る。

部屋までの歩数……。
見えないことを受け入れて、既に策を?

山南は、翡翠の切り替えの速さに驚く。

頼りないようで、存外しっかりしているのかもしれないと思う。

が、張りつめた翡翠の胸の内を思うと、何もできないことを罪悪感のように感じ、ゆっくりと歩く。


――まだ、彼の笑顔を見ていない


ふと、気づく。


――見えないというだけで、こんなにも廊下は長かっただろうか

歩数を数えながら、翡翠は思う。


障子を開ける音、畳を歩く音。
耳を澄ませ、些細な音の違いに集中する。


「色々あって疲れたでしょう。刀と竹刀を置いて、ゆっくり横になってはどうですか?」

翡翠は山南に刀と竹刀を預けた途端、崩れるようにしゃがみこんだ。


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