新撰組異聞―鼻血ラプソディ
嬉しさのあまり声をあげ、翡翠くんの手を取り、緑寿庵清水の暖簾をくぐる。



甘い香りが、ふわり心地好い。


「金平糖」


丸い形に角がいっぱいついた飴玉。
竹かごの小さな皿とお茶をお盆に乗せ、お女中が勧める。


「お試食どうぞ、甘くて美味しおすえ」


「星の形」


「へえ、砂糖を職人の技で、釜で丁寧に煮詰めていくんどす。
何でかわからへんのどすけど星の形ができるんどす」


嬉しくて顔がほころぶ。


「あった……星の形。俺の知ってる金平糖と同じ。
沖田さん……ほんまにあった……」


目に、涙をいっぱい溜めた翡翠くんの口に、金平糖を1粒入れる。


「……美味しい」


「うん、きれいな形。食べるのがもったいないくらい」



奥から店主が顔を出す。



「ようお越しやす」



「織田信長が宣教師ルイス·フロスからもらったお菓子なんですってね」


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