私と彼の恋愛理論
その日は珍しく、彼女に酒を飲ませた。
大したお弁当じゃないから悪いと彼女が毎回遠慮するため、それまでは夕食と言っても、パスタとかラーメンとか、軽い感じで済ませていた。
でも、その日は、寒くなったからどうしても鍋が食べたいと、俺が我が儘を言った。
俺は車の運転があるからと、彼女にだけ酒を勧めた。
帰り道、俺の計画通り、ほろ酔いになった彼女は、車の助手席から俺をじっと見つめてきた。
車を彼女のアパートの前に停める。
「もうバレてると思うけど。」
少しだけとろんとした頼りない目で、彼女の口元は少し笑っていたように思う。
「私はあなたのことが、好きです。」
俺が望んでいた言葉をあっけなく彼女は口にした。
潤んだ瞳で、俺の言葉を待つ彼女。
そこで、俺も好きだと告げてしまえばよかったのだろう。
だけど、言葉は出てこないのに込み上げる嬉しさを発散させる方法が他に見つからなかった俺は、次の瞬間、助手席の彼女を抱きしめていた。
「あの、ちょっと、吉川さん?」
腕の中にすっぽりと収まった彼女の頭をシートに押しつけて、戸惑ったように俺に呼びかける可愛い唇をそのまま奪った。
今、思い出してもかなり乱暴だったと思う。
恥ずかしい話、俺には全く余裕なんてなかった。
唇を離した時には、もう自分の行動が恥ずかしすぎて、まともに彼女の顔を見て、好きだと言うことなんて不可能だった。
だから、彼女から視線を外して言ったんだ。
「じゃあ、付き合う?」
我ながら、何て酷い答えだろうと思った。
でも、彼女は笑っていた。
笑って「はい」と答えたのだ。