私と彼の恋愛理論
シフト表が埋まらないとき、どうしても正規職員で無理して埋めることになる。

それは仕方のないことだと私も里沙も理解している。

そして、私はずっと尚樹が土日も昼夜も関係なく働いていたので、休みの希望も特になく、あまり困ると思ったことはなかった。

尚樹は今頃どうしているだろうか。

勝手に距離を置いたのは私の方なのに、もう何ヶ月も毎日彼のことを考える。


まっすぐに伸びた背筋。

少しだけつり上がった目。

男の人のわりに細くて綺麗な指。

全てが好きだった。


彼からの連絡がないということは、つまりはそういうことで。

あきらめるしかないことは十分に理解していた。


私は小さくため息をついて、シフト表を黙々と埋めていった。



ふと、カウンターに近寄ってくる気配がする。利用者だろう。

カウンターには里沙がいるので、私は特に振り返ることもなく、パソコンのディスプレイを見つめていた。



しばらくの沈黙の後、おかしいなと思う。

里沙が一向に声を掛ける様子がない。

どうしたのかと振り返った瞬間、私はそのまま固まってしまった。





そこに立っていたのは、尚樹だった。
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