私と彼の恋愛理論
渋々引き受けたものの、彼の新しい恋人のためにネックレスのショーケースを何時間も覗いているほど、私は暇ではないし、心も広くない。
できるだけ手短に済ませようと、彼に質問をする。
「どんな相手なの?」
「どんなって…一言では言えないけど、強いて言うなら、笑顔が可愛い。一緒に居ると癒されるし、僕のつまらない話も一生懸命聞いてくれる。」
「いや、そういうことじゃなくて。年齢とか…」
「あと、嘘付きなんだ。僕によく嘘を付く。そこも可愛いんだけど。」
「もういい…そのくらいで。」
本当は、プレゼント選びの参考に年齢や職業を知りたかったのだが、このままだと延々惚気を聞かされそうなので、早々に諦めた。
「翔子に任せる。君が今欲しいのでいいよ。」
そう告げる彼の表情から、投げやりな感じは受けなかった。
ああ、そうか。
私と似ている女性(ひと)なのか。
妙に納得したと同時に、少し胸に痛みが走る。
人の好みはそう簡単に変わるものではないから、むしろその方が自然なのに。
どこかで、自分とは違うタイプの女性を選んで居て欲しかった、そう思っている自分がいた。
そうでないと。
きっと、私は彼女に嫉妬してしまう。
いや、もうすでに嫉妬しているのだろう。
もしも。あの時。
彼の手を離さずにいたら。
今も、この優しく紳士的に微笑む男の隣に居たのは私だったかも知れない。
このネックレスが輝くのは、私の胸だったかも知れない。
自分勝手な思いが私の頭を占領する。
二年前に無理矢理忘れたはずだった。
もう大丈夫だと何度も自分に言い聞かせて、過去は全部振り切ったはずだった。
でも、ほんの少し会っただけで。
こんなにも簡単に気づいてしまった。
わたしは。
まだ。
彼のことを、愛している。