私と彼の恋愛理論
私が選んだネックレスを包装してもらい、店を出る。

約束通り食事をご馳走してくれるというので、昔よく行った近くの洋食屋に入った。

何かをずっと会話していたけど、ほとんど何を話したかは覚えていない。

彼への思いが断ち切れていないことに気づいてしまってから、私はずっと上の空だった。


ふと、彼の視線が私の指先に止まる。
右の薬指には昔から、祖母の形見の指輪をしている。
シンプルなデザインのため、仕事にも支障はなかった。

「その指輪は、彼から貰ったの?」

急に問いかけられて、私は思わず自分の指先に視線を落とす。

『お祖母さんの形見なんだね。よかった、違う男性との思い出の品じゃなくて。』

『違う男性から貰った指輪を堂々とデートにしてくるほど、私は大胆な人間じゃないわ。』

敬一郎とずいぶん前に、そう笑い合ったのを思い出す。

そうか、もう忘れてるよね。
だって、彼にとって私はすでに過去の女だもの。

やや自棄になって、顔を上げて、にっこり微笑んでみせる。

「ええ、そうよ。」


私は、今まであなたに嘘を付いた覚えは一度もない。

だけど、いいでしょう?
今夜くらいは。

今度こそ、私は本当にあなたの手を離すの。
最後に、笑顔で手を振るために。
かわいい嘘を付いて。
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