恋愛事案は内密に
この応接室の隣、天井から床まであるグレーのパーテーションをはさんだところが、先ほどの女性と営業の人がいる事務所になっていた。

ドアを開ける音がする。

「おまたせしました。営業の郡司と申します」

背が高く、肩や首周りががっしりした体型。

色黒でホリが深く、きれいに整えられた眉毛は太く、黒々としていた。

短髪な黒髪にちょっとだけワックスで軽く髪の毛をたたせている。

姿勢を正し、ジャケットの内ポケットから名刺入れを取り出す。

やや骨太な長い指先から、名刺を受け取る。

「履歴書、スキルカードともに拝見させていただきました」

「それで、仕事なんですけど」

「ただいま求人を探している最中でして」

「そうですか」

沈んだ声が不安に聞こえる。

「……わかりました。それでは」

「まだ可能性がありますので、お待ちになってください」

何度こういった社交辞令を聞いたかしれない。

わたしの頭の中は別の会社へ受け直そうという考えに切り替わる。

人材派遣会社を出て、コンビニに寄り、ペットボトルの飲み物とともに無料求人誌をもらう。

来た道を戻り、公園のベンチに座ってペットボトルのお茶をあおりながら、求人誌をめくる。

『お仕事豊富にあります』という広告のキャッチコピーが目を引く。

ホントにあるのかよ、と心の中で突っ込みを入れた。
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