恋愛事案は内密に
こちらに注がれる視線に気づく。

目鼻立ちが整ったきれいな顔をしたスーツ姿の若い男性が近づいていた。

「あの……」

「はい」

「どこかでお会いしましたよね」

「え?」

「あれ、人違いかな。あの、そういえば……」

持っていたカバンから急いで何かを取り出そうとしている。

「森園さん」

郡司さんが急ぎ足でこちらに駆け寄った。

男性はちらりと郡司さんを見ると、郡司さんは軽くおじぎをした。

「あ、すみません。お騒がせして」

照れくさそうに赤い顔をしながらそういうと男性はいそいそとエレベーターホールへ消えた。

「さっきの方はお知り合いですか?」

「いえ、まったく」

「そうでしたか。遠くからみたら何だかしっくりしていたんで。ああ、無駄口はこの辺で。先ほどの顔合わせですが、OKもらいました。正式な手続きと書類を作成しますので、またウチのオフィスにお越しください」

「わかりました。よろしくお願いします」

人材派遣オフィスのあるビルまで一緒に戻り、私は自宅に戻る。

自宅までの道のりの足取りが軽い。

ようやくスーツにかかる仕事探しの重荷が下ろせて身軽になった。
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