恋愛事案は内密に
「困りましたな」

空気が重い。

両肩にずしりとのしかかる。

さっきまで、さんざんほめちぎり、談笑までかわしていた。

なのに、急に相手の顔色が曇った。

「まだわかりませんかね」

やわらかなこげ茶色の皮のソファにでっぷりと脂肪を蓄えた体を沈めさせ、ふんぞりかえり、腕を組んでいる推定五十代くらいのおじさん。

目を合わせようともしない。

おじさんのいるすぐ後ろの青色のパーテーションで区切られた側からは、パソコンのキータッチの音、電話の呼び鈴、上司と部下の簡単な仕事の割り振りの声が聞こえてくる。

「どうして我が社を選んだんですか。未経験OKっていうのは、求人広告に出しました。ですが、あなたの経歴からだと」

「それは、わかっています」

「ですから、ここよりも他の会社のほうが、あなたに合っていると感じ取れませんかね」

今度は先ほどよりも強い口調だ。簡単に口を開くことができない。

「……他にご質問は」

「チャレンジしたいんです。新しいことに」

面接官のメガネの奥の目が鋭くなる。

騒がしかった音が一瞬消えた。

「ですがね、このご時世、そんなに甘くないことだって、お宅はわかってらっしゃるでしょう」

腕組みをほどき、目の前にあるテーブルの上にのっかっている履歴書をとる。
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