恋愛事案は内密に
「うちだってね、あなたとこの時間を遊びにつかっているわけじゃないんだよ。そりゃあ、しゃべりに自信があるからって、うまく丸めこもうとしてるんでしょうけども」

「そうじゃ、ありませんが」

「年齢、未経験歓迎っていってもさ、考えてみればわかりますよね。森園さん、30歳なんでしょ。普通こういう求人広告みて、自分に合いそうだなって」

「異業種にチャレンジしてみたいんです」

おじさんは履歴書から手を離し、うっすら伸び始めのヒゲが生えているあごに手をやる。

「森園さんね、来るところ間違ってるんじゃないですか。あなたがいくべき会社はウチとは違って別にあると思うんですけど」

テーブルの上に載った履歴書の写真の笑顔がむなしく映る。

「時間の無駄かもしれませんよ。あなたにとっても、わたしどもにとっても。森園さんのチャレンジ話を聞くボランティアじゃないんですよ。もう次の面接時間なので、この辺で。合否は一週間後、電話か郵送でお知らせしますので」

履歴書をファイルにはさみながら、面接官のおじさんは口を開く。

「電話の声はずいぶん若い方と思っていたんですけどね。案外、声のインパクト強いんですね」

「……ありがとうございました」
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