恋愛事案は内密に
四月もまだはじまったばかりだというのに、たぶん昨年からずっとつけっぱなしなんだろう。

アーケードの上からは七夕のディスプレーが垂れ下がっていた。

笹や黄色や赤などの色とりどりの短冊、てらてらした素材の星やボンボリの過剰な装飾が人通りの少ないアーケードを一層さびしくさせていた。

アーケードの梁にくくりつけられたスピーカーから流れるよどんだ音楽に耳を澄ます。

湿り気を帯びた風を受け、息を切らせながら、アーケードを抜ける。

ワンルームの自宅に帰った頃には、せっかくのスーツも雨でずぶぬれだった。

やけっぱちで辞めてしまってからというもの、バイトで食いつないでいたけれど、自分に見合う職がみつからない。

ヘトヘトになったころに、求人雑誌に載っていた『お仕事豊富にあります』というキャッチコピーにのっかり、派遣会社へ電話をかけた。
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