世界でいちばん、大キライ。


「じゃあ、お先に失礼します」

制服から着替え終えた桃花がカウンターへやってきて、ぺこりと了に声をかける。
今日は突然借り出されただけなので、早めに上がっていいと指示された。

「うん。本当ありがとう」
「いえ! こちらこそ! ご厚意に甘えて何杯も作らせて貰っちゃって……」
「ははっ。今日はもうひとり飲む相手がいるから」

カウンター越しに了は、変わらずカウンターチェアに腰掛けているジョシュアを見ながら笑った。
それを受けたジョシュアも、にっこりと笑って桃花を見上げる。

「これもオレたちのシゴトだからね。……っていうのは口実で、モモカに恩を売っておこうかと」
「えっ」
「おいおい。そんなに爽やかに恐ろしいこと言うなよ、ジョシュ」

桃花は久志がいなくなってから約30分ほど仕事をしていたが、その間繰り出されるジョシュアと了のやりとりは見ていて飽きなかった。

コーヒーについての専門的な会話から、ただ単に『好き』というオススメ店の話をしあったり。
イタリアでの思い出話をしてみたり、近況報告をしてみたり。

そんなふたりは、まるでこのソッジョルノのように心地のいい空気を醸し出していた。ジョシュアに関しては初対面だというのに、そんな気さえ忘れさせるほど、場に馴染んでいる。
そのせいか、桃花もこの短時間でかなり親しみをおぼえた。

そのため、ジョシュアの言動や行動は彼のフランクな性格によるもの、と感じる部分もあって、桃花は笑いながら半分ジョークのようなものと受け止めて話を聞く。

「ホント、面白い人ですね、ジョシュアさんて。アドバイス、色々とありがとうございました。どうぞ、ごゆっくり」
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