世界でいちばん、大キライ。
不思議といつもそう。
麻美は言葉で表されずとも、敏感に雰囲気を察してきた。

だから今回も同じ。
しかも、今回の久志は相当複雑な感情のような気がして、突っ込んだことなど聞ける状況ではなかった。

ただひとつわかるのは、桃花とうまくいって帰ってきたのではないということ。

ピリピリとした様子は、時間が経つにつれて多少薄れてきたものの、やはり核心には触れさせてもらえそうもない。

余計なお世話なのは子供ながらに承知しているが、どうしても気になることだったから。

本当は翌日すぐにでも桃花に会いたい、と思っていた麻美だが、あの次の日は桃花が休みで、平日になると学校行事などが立て込んでいて今日になってしまったのだ。

麻美の真面目な声色に、桃花は少し間を置いて脇に持つトレーに手を添えると口を開いた。

「会ったよ」
「じゃあ、やっぱりなんかあったんだ」

憤慨するような物言いの麻美に無言で笑顔を浮かべ、眉尻を下げる。
「ヒサ兄が悪いんだ、ゼッタイ」などとブツブツ言う麻美に、申し訳なさそうに苦笑した。

「ごめんねー……私も一応大人なのにさ。麻美ちゃんにそんな心配させて。それどころかかっこ悪いとこばっかり見せちゃって……」

肩を落としながら力なく笑う桃花に、なんともいえないもどかしい感情を抱く。
今まで、活発で明るい印象しかなかった桃花の初めての姿に、久志に対するときと同じようになにも言葉が見つからない。
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