世界でいちばん、大キライ。
麻美の前方に見えた濃い色のジーンズ。ぴたりと足を止め、見上げたと同時に聞こえてくる。
『今でも好きな女子をからかうっていうのはあるんだな』と、揶揄するような言葉を発し、ぽん、と大きな手のひらを麻美の小さな頭に乗せた。
麻美は驚きのあまり何も言えず、男子は久志(オトナ)の圧力に負けて口を閉ざす。
ニッと笑った久志は『んなこと続けたって、好きになってなんかもらえねぇぞ』と言って、麻美を連れ出した。
その瞬間、麻美は久志しか見えなくなった。
自分のためにわざわざ来たわけじゃない。結局は自分の母・久志にとっては姉に用事があって近くにいただけの、偶然の出来事だっただけなのに。
それでも、あの日あの時に、麻美は久志に淡い感情を抱いた。
単純かもしれないけれど、麻美の中では今でも鮮明に思い出せる大きな出来事には変わらない。
「……ん……あれ?」
そんな思い出の記憶を夢に見ていた麻美が目を開ける。
知らぬ間に寝落ちしてしまっていたようで、全開のままのカーテンの窓は真っ暗になっていた。
体を起こしたのと同時に、ガチャガチャと玄関から音が聞こえてくる。
一瞬で目が覚めた麻美は、バン、と勢いよく部屋を飛び出した。
「……ただいま。なんだよ、乱暴にドア開けて」
「べ、別に」
「お前、メシは?」
「今起きて、なんにも」
久志がネクタイを緩めて麻美の前を横切ってリビングへ入る。麻美は返事を返しながら、久志の背中を追う。
久志は真っ直ぐにキッチンへと向かうと冷蔵庫を開けて中を覗く。
「んー……適当になんか出来るか。シャワー上がるまで待てるか?」
その問いかけに麻美はコクリと一度首を縦に振る。
それを確認した久志は、カバンと携帯をダイニングテーブルに置いて自室へと戻った。
そのまま浴室へと向かう足音を聞きながら、麻美は未だにテーブル付近に立ち尽くしたまま。
すると、テーブルの上に置かれた久志の携帯が振動し、麻美は体を振るわせた。
反射的に携帯に視線を向けると、その画面にはメールのアイコンと【葉月桃花】の文字。
『今でも好きな女子をからかうっていうのはあるんだな』と、揶揄するような言葉を発し、ぽん、と大きな手のひらを麻美の小さな頭に乗せた。
麻美は驚きのあまり何も言えず、男子は久志(オトナ)の圧力に負けて口を閉ざす。
ニッと笑った久志は『んなこと続けたって、好きになってなんかもらえねぇぞ』と言って、麻美を連れ出した。
その瞬間、麻美は久志しか見えなくなった。
自分のためにわざわざ来たわけじゃない。結局は自分の母・久志にとっては姉に用事があって近くにいただけの、偶然の出来事だっただけなのに。
それでも、あの日あの時に、麻美は久志に淡い感情を抱いた。
単純かもしれないけれど、麻美の中では今でも鮮明に思い出せる大きな出来事には変わらない。
「……ん……あれ?」
そんな思い出の記憶を夢に見ていた麻美が目を開ける。
知らぬ間に寝落ちしてしまっていたようで、全開のままのカーテンの窓は真っ暗になっていた。
体を起こしたのと同時に、ガチャガチャと玄関から音が聞こえてくる。
一瞬で目が覚めた麻美は、バン、と勢いよく部屋を飛び出した。
「……ただいま。なんだよ、乱暴にドア開けて」
「べ、別に」
「お前、メシは?」
「今起きて、なんにも」
久志がネクタイを緩めて麻美の前を横切ってリビングへ入る。麻美は返事を返しながら、久志の背中を追う。
久志は真っ直ぐにキッチンへと向かうと冷蔵庫を開けて中を覗く。
「んー……適当になんか出来るか。シャワー上がるまで待てるか?」
その問いかけに麻美はコクリと一度首を縦に振る。
それを確認した久志は、カバンと携帯をダイニングテーブルに置いて自室へと戻った。
そのまま浴室へと向かう足音を聞きながら、麻美は未だにテーブル付近に立ち尽くしたまま。
すると、テーブルの上に置かれた久志の携帯が振動し、麻美は体を振るわせた。
反射的に携帯に視線を向けると、その画面にはメールのアイコンと【葉月桃花】の文字。