世界でいちばん、大キライ。
あまりに慣れないシチュエーションに、桃花は頭が回らない。

「その奥には何を秘めているんだろう?」
「べ、別に……」
「ふぅん? でも、オレは向こうにいるバリスタと同じ瞳をしてると思ったんだケド。挑戦者(challenger)の瞳(め)。その瞳、イチバン好きだ。コワイモノシラズっていうんだっけ?」
「怖い、もの……」

ふと、桃花の頭に過ったのはあの言葉。

『成功する確信もないのにむやみに踏み出すのはどうかと思う』

この間久志に言い捨てられた言葉だ。
納得できないと反論したものの、どこかでずっと引っ掛かっていたからすぐに浮かんできた。

(違うもん……私はただ)
「頑張りたいだけで……」

そうひとりで言い訳がましく思っていることが、知らぬ間に口から零れ落ちる。
それにまだ気付かないまま、桃花は連動するように今しがた送った久志へのメールを思い出す。

「Yes‼ そのキモチが大事」

ジョシュアは太陽のように眩しい笑顔をパァッと浮かべると、ギュッと桃花を抱きしめた。
毎回のことながら、その突然の行動に絶句している間に、ジョシュアはパッと腕を緩めて桃花の肩に手を乗せた。

「モモカのその情熱を信じてるよ」

軽いノリだったかと思えば、すぐに真面目な表情になる。
ジョシュアのどこか鋭い視線に囚われた桃花は、やはり何も言えずに目を揺るがせる。

「もう暗いし、送っていくよ」
「だっ、大丈夫ですっ! 近いのでっ!」
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