世界でいちばん、大キライ。
*
金曜日。デスクが並び、9人ほどの席が設けられている、パーテーションで仕切られたブース内。
久志はいつものように会社でパソコンに向き合っていた。
あの日の桃花のメールの存在など気付くこともなく。
麻美が久志の目に触れないようにしたのだから当然なのだが。
「あの……お疲れ様、です」
「え。ああ、どうも」
缶コーヒーを差し出して久志の元に現れたのは水野。
昼もまわっているというのにデスクについたままだった久志は、軽く頭を下げてその缶を受け取る。そして、椅子をゆっくり回すとふんわりと肩下で髪を揺らす水野を見上げた。
「今週、お忙しそうだったので……」
「あー。納期が迫ってるから。でも、もうすぐ終わる予定」
プシッと缶を開け、コーヒーを口に含みながら、再び体をパソコンへと向けなおす。
水野は白く長い手を前に組んで、静かに見守るように斜め後ろに立ったまま。
SEという肩書の久志は、顧客からの依頼に沿って設計からプログラミングまで請け負っている。昔はチームで受けた仕事を、一連の流れのある一部だけを担当していたものだが、今ではある程度をこなせる。
それに加え、新人フォローもしていて毎日追われるように仕事をしている。
客との約束である納期のためはもちろんだが、家にいる麻美のことを思ってなるべく定時で切り上げようとすると、今のように昼休みもまともに取らずに仕事をするのは珍しくない。
「そうなんですね。でも本当、そういう熱心さに影響されるみたいで、綾瀬くんも曽我部さんに追いつこうと必死みたいです」
「そーかぁ? オレには綾瀬は飄々としてる男にしか見えねぇな」
「あ。噂をすれば」
金曜日。デスクが並び、9人ほどの席が設けられている、パーテーションで仕切られたブース内。
久志はいつものように会社でパソコンに向き合っていた。
あの日の桃花のメールの存在など気付くこともなく。
麻美が久志の目に触れないようにしたのだから当然なのだが。
「あの……お疲れ様、です」
「え。ああ、どうも」
缶コーヒーを差し出して久志の元に現れたのは水野。
昼もまわっているというのにデスクについたままだった久志は、軽く頭を下げてその缶を受け取る。そして、椅子をゆっくり回すとふんわりと肩下で髪を揺らす水野を見上げた。
「今週、お忙しそうだったので……」
「あー。納期が迫ってるから。でも、もうすぐ終わる予定」
プシッと缶を開け、コーヒーを口に含みながら、再び体をパソコンへと向けなおす。
水野は白く長い手を前に組んで、静かに見守るように斜め後ろに立ったまま。
SEという肩書の久志は、顧客からの依頼に沿って設計からプログラミングまで請け負っている。昔はチームで受けた仕事を、一連の流れのある一部だけを担当していたものだが、今ではある程度をこなせる。
それに加え、新人フォローもしていて毎日追われるように仕事をしている。
客との約束である納期のためはもちろんだが、家にいる麻美のことを思ってなるべく定時で切り上げようとすると、今のように昼休みもまともに取らずに仕事をするのは珍しくない。
「そうなんですね。でも本当、そういう熱心さに影響されるみたいで、綾瀬くんも曽我部さんに追いつこうと必死みたいです」
「そーかぁ? オレには綾瀬は飄々としてる男にしか見えねぇな」
「あ。噂をすれば」