世界でいちばん、大キライ。
「曽我部さんは、仕事出来るからとても忙しそうですもんね。……本当は、海外赴任決まってたり……?」
「いや。この狭い空間で慣れちまって、海外(そと)なんて怖くてね」
「そう、ですか」

上辺だけの会話を交わしながら、乾いた笑いを零す。

頭の中では水野よりも別のことに囚われていて。

今でも鮮明に……つい、数分前にでも言われたかのように思い出せる、あの言葉。


『大キライ』


思い出すのは、そう噛みついてきた、くしゃくしゃな桃花の顔も同時に――。

「あの」

水野が何かを言いかけたタイミングで、ふたりの間にプルルルッと電話の音が割って入る。

ちょうど昼時で人が出払っている時間。水野は率先してその外線を取ると、一言二言交わしたのちに、目を大きくさせて久志を見た。

そのただならぬ視線に久志も緊迫した面持ちになり、水野の電話の行方を気にする。
まもなく、水野が「少々お待ちください」と保留にして、久志へと受話器を差し出しながら言った。

「学校からです。麻美ちゃんが――……」


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