世界でいちばん、大キライ。
少し荒い呼吸を繰り返していると、再び久志が姿を見せた。

手にしていたグラスをガラスのテーブルに置き、薬局の袋からガサガサと処方された薬を取り出す。

久志に手渡された錠剤を口に放り込み、水で流し込むと、久志は麻美の着替えをベッドにポンと投げた。

「『別にイヤなんかじゃない』ってさっき聞いたからな? 『勝手に部屋に入った』とか、後で文句いうなよ」

そういう言葉はいつも通りの久志だが、やはり病人ということもあって、態度はいつも以上に優しい。
錠剤をフィルムから出してあげたり、グラスを受け取ってあげたり。

そっと額に触れた大きな手が、本当に心配しているのが麻美にはわかって余計に熱があがりそうだ。

「オレ、ちょっと色々と買い足してくるから、着替えて大人しくしてろよ。すぐ戻る」
「ヒサ、兄……」
「あ? ああ、なんか欲しいモンあるか?」
「……ない。そうじゃなくて」
「じゃ、適当に買ってくるからな」

麻美の掠れたか細い後半の声に気付かずに、バタンバタン、と忙しなく部屋のドアと玄関の音を上げて久志は出て行ってしまう。

麻美はしばらく動かずに、閉まったドアを見つめていた。
少しして、溜め息をひとつ吐いた後に、のそのそと着替えを済ませて久志のベッドにそのまま横になる。

まだ熱が上がるのか、ぶるりと体を震わせると、足元の掛け布団を引っ張り上げて肩まで被る。
コロン、と寝返りを打ち、接地している壁側に向くと、膝を抱えるように小さくなった。
< 136 / 214 >

この作品をシェア

pagetop