世界でいちばん、大キライ。
「次の金曜日に、お店に来てくれたら諦めないって。……でも、もし来なかったら諦めるって……そうメールが来てたの」

久志は眉間に皺を寄せると、ただ黙って麻美を見つめた。
その視線が麻美はなんだか痛くて、だんだんと俯いていく。

ピリピリとしたような空気と、久志の視線。
麻美は熱のせいで、いつものような強気な麻美ではなかった。そのため、頭の中で今日の日のシナリオを考えていたはずなのに、思っていたように口が動かない。

ガサッと新聞をソファに置く音ですら、麻美は肩を上げて驚く始末。
それでも、跳ね上がった心臓を押さえながら、麻美はその手に力を込める。

「桃花さんから【最後に】って。そうやってヒサ兄のケータイにメールが来てたの! あたしはそれを見て、消した!」
「……なんでそんなこと」

麻美の衝撃の告白に、さすがの久志も驚いてそう返すのがやっと。
目を大きくしている久志に、麻美は上着の裾をぎゅっと握りしめて口を開く。

「……だって。だって、ヒサ兄、その時そのメール見てたら余計なことばっか考えて、また心にもないような返事とかして終わらせちゃってたでしょ?」

眉を寄せて、切羽詰まったような表情を久志に向けた。

麻美の考えはこういうものだ。
あの日。桃花からのメールを消したのは、自分の恋心のエゴからくるものではない。

下手に時間を与えると、久志は余計なことばかり考えて悪い方向へといくのが目に見えていたから。
だったら、あの時のメールは直前までなかったことにしておいて。

そして、約束当日に、強引にでも久志を素直にさせて、桃花の元へと送り出すのが一番うまくいく可能性が高いように感じたから。

だから、麻美は敢えてメールを消去して、この金曜日に賭けていた。

しかし、まさか自分の失態でこんなことになるだなんて夢にも思っていなかった麻美は、冷静さを欠いて焦りを滲ませる。

「ヒサ兄! 桃花さん、シアトル行っちゃうよ? 今なら間に合うよ!」
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