世界でいちばん、大キライ。


「はよ。メシ、食えるか?」

日曜の朝。
リビングに目をこすりながらやってきた麻美を見て、久志がソファから立ち上がる。

昨日の土曜は、麻美の容態が変わらずに、高熱を薬で下げての繰り返しで久志は付きっきりだった。
休日だったことが幸いして、久志も仕事への影響はほぼなく、麻美も精神的に頼れる人間が一日中いたということで、回復してきたのだろう。

「うん」と小さく答えると、麻美はダイニングテーブルに着いた。
キッチンに入った久志は、手を洗いながら麻美に尋ねる。

「うどんとおかゆ。どっち?」
「……おかゆ」

ようやく熱が下がった麻美は顔色もだいぶよく、久志はホッと安堵の息を漏らしていた。
すでに作ってあったおかゆをレンジで温め、それを麻美に出す。

何もいれないシンプルで真っ白なおかゆ。
スプーンを掬い上げてひと口頬張ると、丸一日まともに食事をとっていなかったからか、その単純な塩味のおかゆがとても美味しい。

夢中でそれを口に運ぶ麻美を横目に、久志は再びソファに腰を下ろした。

しばらくリビングには、再放送のバラエティ番組の音だけが響く。
カラン、と麻美が食べ終わったスプーンをお皿に置くと、くるりと顔を左に回す。そして、寛ぐ久志を見た。

「……おかわりならあるぞ」
「もういらない。あとで食べる」
「薬飲めよ」
「もう少ししたら飲むし」
「……歯、磨けよ」
「言うと思った」

ふたりとも淡々とした口調でそんな会話をしているが、麻美は内心穏やかではなかった。
大きなお世話なのはわかっていても、やはり〝その後の〟ふたりが気になるのだ。

しかし、これ以上、どうやって切り出せばいいのかわからないまま。
躊躇いながらその場に座っていると、久志がギシッと音を立ててソファから立ち上がる。
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