世界でいちばん、大キライ。
「気になるなら、全部飲み比べてみればいいんじゃないんですか?」
「うーん。そうしたいトコロだけど、偶然通りかかったら見つけただけで、何本も持って歩けないかと思って」

ジョシュアが軽く笑いながらプルトップに指を掛ける。
桃花は「それもそうですね」と納得してジョシュアを見上げた。

「缶コーヒーまで興味があるんですか? すごいですね」
「まぁ、コーヒーと名のつくものは勝手に反応しちゃうヨネ。でもさ、それだけじゃなくて。向こうはこういう機械、こんなふうに歩いていてどこにでもないから」
「えっ。そうなんですか?」
「ニホンはスバラシイね~。本当に飽きないよ」

音を立てて開けた缶コーヒーを傾けてひと口飲むと、「へぇ~」となにやら感嘆して好奇心を表している。

日本では当たり前のようにどこにでも見かける自動販売機。それ自体が珍しいようだが、そこに並んだコーヒーの種類にも興味があったようで、ジョシュアは休みと知っていた桃花に電話を掛けた、という状況だった。

そんなジョシュアを見た桃花は、自然と口を開いていた。

「私もシアトルへ行ったらそんなふうになるのかなぁ……」

その言葉に、ジョシュアはくすっと笑いを零す。

「たぶんね。向こうはラテ、上手い人間がそこらへんにいるし」
(少し先の自分が想像できない……)

ボーッと遠くを見つめていると、ガコン、と音が聞こえた。
しかしその音に特に反応せずにいた桃花の視界に、ぬっと青色が入り込む。
焦点を目前に合わせると、先程ジョシュアが買ったコーヒーの隣に並んでいた別のコーヒー。

それを、口元を弓なりに上げたジョシュアが差し出してくれていた。

「飛んできてくれたお礼」
「えっ……あ、ありがとうございます」
「今、飲む?」
「え? あ、じゃあ……」

どぎまぎとして答えると、ジョシュアはニコッと笑ってコーヒーを開けてから、「はい」と桃花に手渡した。
たったそれだけのことだが、その細かな気遣いをするような人もなかなかいない気がして、ドキドキしてしまう。

お礼を言って両手で受け取ると、そっと飲み口に唇を付けた。

(……え?)
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