世界でいちばん、大キライ。
まだほんの少しコーヒーの味がした程度。
缶を傾ける前に、ジョシュアの視線が気になってしまって飲むのを躊躇する。

「な、なにか……?」
「んーん。気にしないで。モモカ、飲んで?」

不思議に思いながら、先刻ほどではないが未だに感じるジョシュアの視線の中で、桃花はコクリと喉を鳴らした。
夏は終わったとはいえ、まだ日中は暖かいし、何分走ってきた手前喉も渇いていた。

桃花はごくごくっと続けて喉を潤すと、顔を戻して一息ついた。

ニコニコ顔のジョシュアと目が合った時に、するりと右手の缶コーヒーを取り上げられた。

「トレード。いい案デショ?」

そうしてジョシュアが持っていた金色の缶を手に持たされると、目の前で今自分が口を付けたコーヒーを飲む。
間接キスなんて気にする歳でもないのに、いつもペースを握られるジョシュア相手だからか、桃花は内心動揺しながら美麗な横顔を呆然と見つめた。

「あー、こっちの方がクセあるかもね?」

喉が上下するのを瞬きもせずに見ていると、すぐに顔を向けられてハッとする。
自分の顔が赤くなりかけてるのを懸命に抑えるように、顔を逸らして声を上ずらせた。

「そっ、そうですね。それに先に飲んだ方は砂糖入ってるし、ちょっと風味わかりづらいかもしれませんし」
「んー。ね、コーヒー飲みたくない?」
「はっ、はぁ?」

やはりジョシュアにペースをかき乱される桃花は、突拍子もない発言にこの短い期間、いつも驚かされる。

(今、飲んだじゃ……あ。もしかして)

しかし、短期間とはいえ、少しはジョシュアという人間を経験している桃花は、瞬時に閃く。

「リョウんとこ、いこ!」

『やっぱり』と心の中で納得した桃花は、キラキラと秋の陽射しを金色の髪に反射させて、無邪気に笑うジョシュアを小さく笑って見つめた。
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