世界でいちばん、大キライ。
予定という予定はない桃花。
あったとしても、日常の家事などと、少しずつ始めようとしていた荷造りくらいなもので。

断ることもせずに、ジョシュアの隣に並んでソッジョルノへ向かう。
もしかしてジョシュアは〝たまたま〟ではなく、〝あえて〟ソッジョルノに近いところから連絡をしてきたのかもしれない、と桃花は思った。

(閉店後に『店(ここ)から家は近い』って話したことあるから……?)

ジョシュアにばれぬよう、ちらりと横目で彼を見上げてそう考える。

(ただ単純に渡米することを喜べていないことに気付いているのかも……)

ノリのいいジョシュアは、それだけではなく気遣いも出来て優しい。
加えて、意外にもしっかりとしていることを、この間の了の話で知ったからか、ジョシュアに対しての信頼感は確かになっている。

海外での生活は当然想像できないけれど、ジョシュアが面倒を見てくれるのならきっと大丈夫だろう。

先程の思考の続きのように、そんなことを頭に思い浮かべながら爪先に視線を落としながら歩く。

――自分は、きっと大丈夫。

そして、久志の方も、麻美との関係はきっと心配することない、と考えて。
久志とも麻美とも。一方的かもしれないが親しくなるにつれて、お互いを思う気持ちを知ったから。

おそらく、次の春まで麻美とうまくやって、久志はそのまま変わらずに日常を過ごす。
自分がいなくなったのを知れば、きっと前のようにソッジョルノへと足を運び、了の淹れたコーヒーをあの窓際の席に座り、新聞を片手に飲む。
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