世界でいちばん、大キライ。
*
昨夜。無意識に携帯電話を気にしていたが、特に変わったことはなかった。
久志がどのような用件で自分を訪ねてきたのかはもちろん気になる。
けれど、今の自分はどうしても自ら連絡を取ることが出来ない状況に置かれているのがわかる桃花は、何度も携帯に手を伸ばし、それを止める、というのを繰り返していた。
あとはもう、神頼み……久志頼みと言ったところだった。
向こうから連絡がきたなら――。どこかでそんな希望を胸に、鳴るかもわからない携帯を気にしながら一晩を明かしたのだ。
結局、とっくに仕事の時間になっている今でも、桃花の携帯にはメールのひとつも届いてはいない。
それを昼休憩で確認した桃花は、内心がっかりとしながら、また笑顔で店に出ていた。
「桃花ちゃん、おうちの人大丈夫だった?」
「あ、はい。昨日あのあと連絡して、予定通り今日会いに行ってきます。ちょうど早番ですし」
「っていうか、アイツも本当に連れて行くの?」
客が一組しかいない店内に聞こえないほどの小声で交わす会話。
最後の了の一言はさらに声のトーンが落ちていた。
桃花が了を見ると、心配そうに眉を軽く寄せている。
その表情にクスリと笑いを零した桃花は答えた。
「見たらびっくりするでしょうけどね。一応『お世話になる人も一緒に行く』とは伝えてますし、ジョシュアさん日本語上手だし」
「なんか図々しく居座るジョシュの姿が目に浮かぶよ」
「確かに。でも、気さくな母なのでたぶん意気投合しそうな気がしますよ」
店内に響かぬよう、声を殺すようにして桃花が笑うと、了もつられて笑顔を浮かべる。
一頻り笑い、「ふぅ」と息をつくと、桃花は再び感慨深げにマシンに触れた。
「来月いっぱい、か」
そんな桃花の心情を代わりに口にした了は、同じように寂しそうに口元を緩める。
少しの間、沈黙がふたりの間を流れ、もの寂しい雰囲気になったのを変えるように、了が突然声をあげた。
昨夜。無意識に携帯電話を気にしていたが、特に変わったことはなかった。
久志がどのような用件で自分を訪ねてきたのかはもちろん気になる。
けれど、今の自分はどうしても自ら連絡を取ることが出来ない状況に置かれているのがわかる桃花は、何度も携帯に手を伸ばし、それを止める、というのを繰り返していた。
あとはもう、神頼み……久志頼みと言ったところだった。
向こうから連絡がきたなら――。どこかでそんな希望を胸に、鳴るかもわからない携帯を気にしながら一晩を明かしたのだ。
結局、とっくに仕事の時間になっている今でも、桃花の携帯にはメールのひとつも届いてはいない。
それを昼休憩で確認した桃花は、内心がっかりとしながら、また笑顔で店に出ていた。
「桃花ちゃん、おうちの人大丈夫だった?」
「あ、はい。昨日あのあと連絡して、予定通り今日会いに行ってきます。ちょうど早番ですし」
「っていうか、アイツも本当に連れて行くの?」
客が一組しかいない店内に聞こえないほどの小声で交わす会話。
最後の了の一言はさらに声のトーンが落ちていた。
桃花が了を見ると、心配そうに眉を軽く寄せている。
その表情にクスリと笑いを零した桃花は答えた。
「見たらびっくりするでしょうけどね。一応『お世話になる人も一緒に行く』とは伝えてますし、ジョシュアさん日本語上手だし」
「なんか図々しく居座るジョシュの姿が目に浮かぶよ」
「確かに。でも、気さくな母なのでたぶん意気投合しそうな気がしますよ」
店内に響かぬよう、声を殺すようにして桃花が笑うと、了もつられて笑顔を浮かべる。
一頻り笑い、「ふぅ」と息をつくと、桃花は再び感慨深げにマシンに触れた。
「来月いっぱい、か」
そんな桃花の心情を代わりに口にした了は、同じように寂しそうに口元を緩める。
少しの間、沈黙がふたりの間を流れ、もの寂しい雰囲気になったのを変えるように、了が突然声をあげた。