世界でいちばん、大キライ。
「行けよ」
「……え?」
「行って来いよ、シアトル」

信じられないほど冷たく聞こえる久志の言葉が、心をきめようとしていた桃花の胸に突き刺さる。

(――なんで)

悲痛の思いに打ちひしがれて、桃花はつい零れ落ちそうな涙を隠すように片手のひらで目元を覆った。
ほんの一瞬、その涙をこらえると、声が震えないように気を付けながら、桃花が話し出す。

「……『会いたかった』とか、『ワザと』とか、期待させるような言葉口にしてるけど、本当は私のこと、好きでもないんですよね? 麻美ちゃんと同じような、保護者的な感情なんですよね?」

期待した自分が馬鹿だった、と自虐気味に思いながら言葉を並べ立てる。
同時に、きっぱりと『好きじゃない』と言わせて吹っ切りたい思いでもあった。

「あの夜のことだって、酔ってただけで誰でもよくて、なかったことにしたいん――」
「悪かった」

桃花が言い終わらないうちに久志がひとこと返すと、水をうったようにしん、と静まり返る。

「そ……れじゃ、肯定してるじゃないですか! もう……もう、大ッキライ!」

桃花は髪を振り乱すようにして、顔を背け、そして改めて小さく繰り返した。

「……キライ……」

自分の右手で左ひじを覆うようにしながら俯く桃花を、久志は見下ろしながら眉を下げて力なく笑った

「それ、結構堪えたな」

失笑するようにして言う久志を再度見上げると、桃花は半ばムキになるようにして声を上げた。
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